中東ビジネス最新情報 ・2020年8月20日

UAEとイスラエル間で和平合意が実現

2020年8月13日、UAEとイスラエルの間で関係正常化に向けた合意が結ばれたことが、両国より発表されました。本件はアメリカのトランプ大統領の仲介で、イスラエルのネタニヤフ首相とUAE/アブダビ首長国のムハンマド皇太子を含めた3者が電話会談し、合意に達したと報じられています。今後は両国間における投資や観光、両国間での直行便の就航、防衛、医療、通信等について協議を進め、正式に二国間での平和条約の締結に進むことが予想されています。また、両国間の発表から2日後の15日には、UAEのAPEX Investment社とイスラエルのTera Groupが新型コロナウイルスのワクチンと検査キットを共同で開発することが発表され、調印式がアブダビで開催されたと報道されました。このような民間企業同士の協業の動きも、今後、拡大してくると考えられます。本件に対する他の中東諸国の反応は様々で、パレスチナやイラン、トルコなどは今回の合意を受けてUAEを非難する声明を出しているものの、バーレーンやオマーン、エジプト、ヨルダンは正常化を支持する趣旨の声明を発表しています。また、サウジアラビアは国民感情に配慮し、公式声明を出していません。

今回のニュースが発表されたのは突然で、驚くべきものでしたが、実はUAEとイスラエルの歩み寄りは近年徐々に進んできていました。例えば2014年にはUAEのアブダビに事務局本部を置くIRENA(International Renewable Energy Agency, 国際再生可能エネルギー機関)の総会にイスラエルの当時のエネルギー省の大臣であったシャローム氏が参加し、翌2015年には、IRENA傘下において、イスラエルの代表部を設立することが発表されました。この際、UAEとしては、IRENAとイスラエル間の合意は、UAEとイスラエル間の関係に影響を及ぼすものではない、というスタンスを取っていました。また、2018年にはアブダビで開催された柔道の国際大会の「グランドスラム」に、イスラエルのレゲブ文化・スポーツ相が出席しており、同大会では、出場したイスラエルの選手が優勝し、イスラエルの国旗掲揚・国歌吹奏も実現していました。

このような背景を経て、この度、歴史的な国交正常化が合意されたことにより、今後、UAEとイスラエル間の民間企業同士による協業機会が増加すると考えられます。特に、ネタニヤフ首相が現地のテレビ演説で「UAEの非石油分野のさらなる発展にあたっては、先端技術の知識共有がお互いにとって有益になるだろう」と語っている通り、石油収入を政府系ファンド等が投資に回しているUAEと、有望なスタートアップが続々と生まれているイスラエルは補完的な組み合わせになることが期待されます。

当社では今後も、UAE企業とイスラエル企業による協業や投資に関する情報等を公開していきますので、是非、引き続き当社ウェブサイトにて発信される情報にご注目ください。


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