中東ビジネス最新情報 ・2022年5月17日

サウジアラビアにおけるエンターテイメント市場の急成長

サウジアラビアは2016年に「サウジビジョン2030」を公表して以降、脱原油依存や産業多角化、観光の促進や国民の生活向上などの目標の達成に向けた積極的な施策を導入しています。その中でも、エンターテイメント市場の開放が目まぐるしい変革を見せています。

2022年のラマダン明けの5月2日からは、「ジェッダ・シーズン2022」と呼ばれる約2カ月に及ぶ大規模フェスティバルが開催されています。イスラム教最大の祝祭「イード」の祝日と同日に大規模な花火とシルクドソレイユの公演とともに始まったこのフェスティバルは、ジェッダ市内に設けられた9つのゾーンで60日間にわたり2,800以上のイベント、体験型ゲームが60種類、コンサート20公演、および国際展示会を4つ開催する予定で、開催初日から3日間で20万人以上の来場者を記録しました。

サウジアラビアのエンターテイメント市場は、現在では「ジェッダ・シーズン」や「リヤド・シーズン」など大規模なエンターテイメントイベントが華やかに開催され、多くの大型テーマパークやファミリーエンターテイメントセンターなどが建築されている等、近年さらに加速度的に拡大しています。また、サウジアラビアの映画市場に着目してみると、4年前までは宗教的理由により存在しなかった映画館が2018年の第1号店オープンから2021年初頭には33館にまで成長、さらにその同年12月までにはさらに20館増え、53館にまで増加しています。映画館の増加に伴い、2021年のサウジアラビアにおける映画の興行収入は2億3,800万米ドル(約300億円)に達し、対前年比で95%の増加を記録しました。サウジアラビア政府は2030年までに映画館を2,600館にまで増加させる目標を掲げており、今後の成長が期待できる有望な分野であると予想されています。

加えて、サウジアラビア政府はエンターテイメント部門の発展のために今後数十年に亘って、640億米ドル(約8兆3千億円)の投資を行うと発表しています。また、サウジアラビアが人気の映画ロケ地として認知されることを狙い、2030年までに100作品の映画をサウジアラビア国内で撮影することを目標に設定しています。すでにジェラルド・バトラーが主演を務めるスパイ映画「Kandahar」や、「猿の惑星:創世記」で知られるルパート・ワイアット監督による「Desert Warrior」などの大作がサウジアラビア国内で撮影されています。

また、サウジアラビア政府は2021年に「Red Sea Fund」を設立し、中東・アフリカ地域における映画の製作や発展を支援する施策を開始しました。すでに100近いプロジェクトが総額1,400万米ドル(約18億円)におよぶ製作資金を受け取っており、ハリウッドやボリウッドなどの海外からの映画製作の呼び込みだけでなく、近隣地域出身の監督の育成や自国及び近隣諸国による映画製作を増やすための投資も始めています。また、サウジアラビア国内で映画業界における高度人材を育成するための研修プログラムを設置したり、専門学校を立ち上げたりと、先見性を持った取り組みにも力を入れています。

このようにサウジアラビアの映画やエンターテイメント業界の規制が緩和されると共に、急速な成長スピードを見せています。これは約40年間、手つかずであった未開拓市場が世界に開かれたということを意味しています。近年さらに活性化しているサウジアラビアのエンターテイメント市場は、日本企業にとっても有望な市場であり、幅広いビジネスチャンスが期待できます。

ksnコーポレーションでは、ドバイ政府機関との提携関係の下、UAEや中東市場における各種規制の調査から参入戦略の立案、現地パートナー候補のご紹介等といったご支援をさせて頂いております。UAE及びサウジアラビアを含む中東地域への進出や販路開拓にご関心をお持ちの企業様がいらっしゃいましたら、是非お気軽にお問い合わせください。

参照記事:https://foreignpolicy.com/2022/05/05/saudi-arabia-film-industry-growth-entertainment-movies-culture/



Copyright© 2024 XREACH Reserch & Consulting. ALL Rights Reserved.