中東ビジネス最新情報 ・2018年3月19日

ブロックチェーン都市 ドバイの仮想通貨ビジネス環境

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ドバイは自国を「ブロックチェーン・ハブ」として位置づけ、公文書管理や交通、旅行産業などさまざまな分野でのブロックチェーン採用プロジェクトを立ち上げています。
ブロックチェーンを活用した技術の一つである仮想通貨に関しても、すでにビットコイン建で不動産売買が成約している、など先進的な取り組みが話題になっています。

さらにドバイは法人税や所得税が原則かからないということもあり、ブロックチェーンを活用した技術の一つである仮想通貨ビジネスの拠点として、注目が集まっています。
そこで今回の記事では、ドバイでの仮想通貨ビジネス環境をまとめてみたいと思います。





各国の規制状況とドバイの規制状況

最初に法規制面ですが、ドバイの状況を説明する前に各国の規制状況を確認してみましょう。

まず、仮想通貨に関連した規制ですが主要な国で仮想通貨の取引自体を禁止している国はありません。
一時期韓国において、仮想通貨取引に関する規制が検討されているとの報道がありましたが、口座名義の実名化等、取引の健全化に関する規制にとどまっています。

一方、ICO(Initial Coin Offeringの略。仮想通貨を利用した資金調達方法。)については多くの国が規制や注意喚起を発表しています。
中国や韓国ではICOが全面的に禁止されているほか、アメリカ合衆国でも一部規制が示唆されています。

ドバイ(UAE)での規制状況は、主要な国々と同等になっています。
つまり、取引自体は禁止されていないものの、ICOに関しては規制が検討されているという状況です。

取引自体に関しては、2017年2月にUAE中銀のマンスーリ総裁が、仮想通貨関連の規制に関連して「暗号通貨を規制するものではない」旨を確認しています。
そのうえで、仮想通貨の取引や仲介に関する具体的な法的枠組みについては整備中というのが現在の状況です。

ICOに関しては今年に入って、金融監督当局であるSCA(Securities and Commodities Authority)により、そのリスクに関する注意喚起がなされるとともに、アブダビグローバルマーケットにより規制準備の声明が出されています。

参考:各国のICO規制まとめ | COINTELEGRAPH日本語版

仮想通貨関連の事業といっても、単純に売買を行うことやマイニング、ICOなど様々な事業形態が考えられるかと思います。
ICO以外は現在のところ禁止は示唆されていないものの、今後整備される法的枠組みについて、自社で検討する事業形態に応じて注意する必要があるでしょう。


事業拠点の設立

ドバイで仮想通貨ビジネスを始めるためには、事業拠点を設ける必要があります。
しかし、ドバイでは外資規制があるため外国人や外国法人が100%自己資本の会社を設立することは基本的にはできません
現地資本のパートナーに51%以上の出資をしてもらう必要があります。

一方、ドバイに30ヶ所ほどある「フリーゾーン」と呼ばれる経済特区では100%外国資本の企業を設立することも可能です。
この場合の注意点として、フリーゾーンでは独自の規制が設けられており、各フリーゾーンで許可されている事業しか行うことができません。
各フリーゾーンで許可されている事業形態を事前に調査するとともに、自社で行おうとしている事業がそのフリーゾーンで実施可能か、フリーゾーン当局とコミュニケーションをとることが必要でしょう。
金融関連のDubai International Financial City、IT関連のフリーゾーンではDubai Silicon Oasisなどがメジャーなフリーゾーンとなっています。
また新興フリーゾーンのDMCCは、暗号通貨関連企業向けライセンスを発行すると発表しています。

また、フリーゾーンでの法人設立の場合には銀行口座開設が難しくなる場合もありますので、設立先のフリーゾーンに対して、銀行口座開設可否や具体的な手続き方法について事前に確認しておくことが必要です。

さらに注意すべき点として、税金はかからないものの、内地の場合にもフリーゾーンの場合にも事業形態に応じたライセンスの取得が必要であり、このライセンス費用を当局に支払う必要があります。
自社の事業形態や法人設立場所に応じた、ライセンス費用も調査しておく必要があるかもしれません。


税金

ドバイでは法人税の制度は存在するものの、現在のところ石油企業や外国銀行の支店など一部の業態のみが課税対象となっています。
また、個人所得税に関しては課税制度がありません。
もちろん、今後の法規制変更により課税が開始される可能性もありますが、付加価値税(VAT)の適用開始時には、法人税・所得税は当面課税されない旨を確認する声明も出されているため、しばらくは安心できると言えるかもしれません。
また先ほど紹介したフリーゾーンと呼ばれる経済特区においては、これらの税金がかからないことがフリーゾーン当局により明言されています。

ただし、ドバイで発生した事業利益を日本に送金等する場合にはいわゆる「タックスヘイブン税制」の対象となることが考えられますので、日本側での税制については事前によく確認することが必要でしょう。

ドバイでの税金に関する動向についてはこちらの記事もご参照ください。
付加価値税(VAT)導入に係る最新動向等、UAEの税制ポイント解説


独自の仮想通貨?「emCash」

仮想通貨関連で注目されているドバイ独自の動きとして、「emCash」という仮想通貨を政府が発行するという発表がされています。
これに関してはまだ具体的な情報があまりないものの、報道を見る限りでは非接触決済による店頭等でのリアルタイム決済に使われるもののようで、仮想通貨(暗号通貨)というよりも電子マネーのようなもののように見えます。
今後の動きに注目してみたいと思います。

参考:Dubai signs deal to create digital currency emCash | ArabianBusiness.com


以上見てきたように、ドバイはブロックチェーン技術の活用に積極的な姿勢を見せており、現在のところ仮想通貨の取引に関しても積極的な規制は敷かれていないという状況です。
さらに税金上のメリットもあるため、仮想通貨ビジネスの拠点として注目が集まるのも頷けます。

ksn Research & Consultingでは、規制やフリーゾーンの調査、そして法人設立業務代行など、ドバイでの事業開始に向けた各種サポートを提供させていただいております。
ドバイでの事業に少しでも関心があれば、ぜひ一度お問合せください。


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