中東ビジネス最新情報 ・2017年12月7日

ドバイに食品を輸出するとき、ハラル認証は必要?

インバウンド需要や新興市場(東南アジア、中東、アフリカ等)マーケットの獲得に向け、引き続きハラル(ハラール)は日本の食品産業で注目を集めるキーワードとなっています。
しかしもともとイスラム教の宗教的な概念であるハラルについては様々な解釈も存在しており、誤解が多いのも事実です。

今回は、中東・UAEへの輸出に関する食品のハラルについて、概要を解説します。


「ハラル認証」は必要か?

結論から言いますと、中東・UAEへの食品輸出にあたり、ハラル認証は必ずしも必要ではありません。
これはなぜかと言うと、中東諸国では「輸入通関時に、行政機関がハラルか否かの判断を行なっている」という位置付けであるからです。

この点が少し混乱を招きやすいのですが、制度としての「ハラル認証」と宗教的な概念としての「ハラル」は必ずしも一致しません。
ハラルとは、イスラム教の聖典であるコーランに基づき定められたイスラム法(シャリーア)において「許された」という意味です。
反対に、豚やアルコールなど、イスラム教で食べることが「禁じられている」ものは「ハラム」であると言われます。

東南アジアで盛んな「ハラル認証」は、食品の製造過程を調査することで、認証機関が「ハラル」であることにお墨付きを与える、という制度です。
こうした制度がある一方で、東南アジアではハラル認証を取得していない商品でも輸入をすることができます。
その食品がハラルであるかどうかは認証マークの有無から判断する、というスタンスになっています。

一方中東では一部の例外を除き、輸入通関時に「ハラム(禁じられた)」なものは輸入許可をしていない、という立場を取っています。
たとえばUAEでは輸入食品は事前に申請し登録をする必要があり、この際に原材料等のチェックを行います。
このチェックの際に、たとえばアルコールが含まれている、豚由来原料(ゼラチン等)が含まれているといった場合には、登録を拒否されるという制度になっています。
このため、国内市場には「ハラム」なものは流通しておらず、流通しているのはすべてハラルであるということになっており、従ってハラル認証のマークも必要ないのです。

※「一部の例外」として、ごく一部の特定のライセンスを持った企業は豚類やアルコール飲料を輸入することができます。
ただし、これらの食品は「For Non Muslims」という掲示がされた、壁で区切られた一部のスペースでしか販売することが許されていません。


ハラル認証が必要なケース

先ほどハラル認証は必ずしも必要ない、という書き方をした通り、一部の食品を輸出する際にはハラル認証が必要です。
中東・UAEでハラル認証が必要になるのは、食肉(豚以外)、およびそれに関連した商品の場合を輸出する場合です。

食肉に関しては、イスラム法で定められたと畜方法で処理されていない場合には「ハラム」となってしまいます。
従って、そうしたと畜方法で処理されていることを確認するため、食肉については中東・UAEでもハラル認証制度が使われているのです。

UAEに正肉を輸出する場合には、
(1)特定のハラル認証機関による認証を得たと畜場・食肉処理場で加工され、
(2)ハラル証明書が発行されている
必要があります。

認証機関および、認証を得た食肉処理場は農林水産省のウェブサイトで公開されています。
2017年12月現在では、認証機関は
・宗教法人日本イスラーム文化センター(Japan Islamic Trust)
・宗教法人イスラミックセンター・ジャパン(Islamic Center Japan)
・Emirates Halal Center for Standards & Quality Certificate Corporation
の3カ所です。

これらの機関から認証を得た食肉処理場は以下の3つです。
・北海道網走郡の「株式会社北海道畜産公社道東事業所北見工場北見地区総合食肉流通センター」
・大阪府羽曳野市の「羽曳野市立南食ミートセンター」(と畜場)、「阪南畜産株式会社」(食肉処理場)
・兵庫県神戸市の「三田食肉センター」

アラブ首長国連邦向け牛肉輸出に関する情報 | 農林水産省

肉由来原料を使用した加工食品の場合にも、上記の証明書が必要になりますが、現時点ではこうした原料の入手・使用は非常に難しいのが現状かと思われます。
今後流通が増えることにも期待したいところですが、現段階では中東向け加工食品の輸出の場合には肉由来原料の使用を避けるようにした方が良いでしょう。

ハラル認証取得が望ましいケース

これまで見てきた通り、食肉およびその加工食品以外では必ずしも必要ではないハラル認証ですが、取得した方が良いケースもあります。
たとえば醤油など、現地の人々に「場合によってはハラムである」ことが認知されている商品です。

先日も、日本産のキッコーマン製醤油が、基準値を超えたアルコールが検出されたことで禁輸・販売禁止措置となったことが話題になっていました。
(キッコーマンから正規に輸出されている商品は外国の工場で製造されたアルコールの含まれないものでしたが、並行輸入されていた日本産品が上記の措置を受けています。)

ご参考:UAEの日本食が変わる?アルコールが検出された日本製醤油が輸入禁止に

こうした商品の場合には、ハラル認証を取得しマークを掲示することで、消費者に安心して購入してもらいやすいというメリットはあります。


これまで見たように、食品のハラル認証は必ずしも必要ではないため、取得にあたってはどういったマーケットを狙うのかをよく検討する必要があります。
ハラル認証を取得するためには多額の設備投資や煩雑な手続き、高い認証料金が必要になる場合もあります。
もちろん、インバウンド需要や東南アジアマーケットなど、そうした投資に見合う効果が得られるケースもありますが、回収するためのマーケット調査やフィージビリティスタディは事前に必要といえるでしょう。

ksn Research & Consultingでは、UAEでの食品登録をはじめとした輸出に必要な対応について、自社で行う食品輸出販売の実業で得られたノウハウをご提供することが可能です。
ハラル認証の取得に迷われた際などにも、ぜひお気軽にご相談ください!


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