中東ビジネス最新情報 ・2017年11月9日

砂漠の国から地域の食品ハブへ -UAEの食糧安全保障戦略-

先日掲載したコラムでお伝えした通り、このほど組閣されたUAE第13時内閣には、「食糧安全保障担当大臣」が新ポストとして創設されました。
砂漠の国であり、国土のほとんどが農業に適さないという条件を持つUAEにとって、食糧の確保は重要な課題です。
今回のコラムでは、UAEの食糧需要・供給の現状と今後の食糧安全保障戦略についてご紹介します。

低い食料自給率

UAEの食糧自給率に関しては政府公式のデータが存在しないものの、おおよそ10〜20%(※)と言われています。
国土のほとんどが砂漠であるUAEでは、アブダビにわずかに農地が存在するのみとなっており、食糧の自給はそもそも困難な状況です。





画像:アブダビのトマト農園(出典:10,000 tonnes more vegetables grown at Abu Dhabi farms | Gulf News





さらにこの国では、人口が高いペースで増加を続けており、そしてそれを上回るペースで食糧の需要が増えています。
幸い現在は膨大な量の食品を輸入することで、国内での需要を満たすことはできています。
しかし、今後の需要増への対応、そして輸入食品の価格変動等、経済情勢の変化にどのように対応するかについては大きな課題となっています。

UAEの人口増加状況(出典:世界銀行)


※参考:
Abu Dhabi to expand food-security projects this year(The National紙) 「日本食品消費動向調査 アラブ首長国連邦(UAE)」(JETRO)

水確保の必要性

さらに、雨がほとんど降らない砂漠の国であるUAEにとっては、飲料水の確保も切実な課題になっています。
現在は水需要のほとんどを海水の淡水化により賄っています。




画像:UAEの大規模な海水淡水化施設(出典:TAQAウェブサイト





水についても食糧同様、現時点での国内需要を賄うことはできている状況です。
しかし、これには膨大な電力・コストがかかるため今後の需要増にどのように対応するかについては検討を要する状況です。
また大きな都市であるUAEでは一人当たりの水消費量も740立方メートルと、世界平均(500立方メートル)よりもかなり多くなっています。
このため消費量を抑え、効率的に水資源を活用する仕組みの構築も必要と言えるでしょう。

参考:UAE(アラブ首長国連邦)の水・電力セクターの現状(JETRO)


UAEの食糧安全保障戦略

このように、現時点では十分な食糧・水を確保できているものの、依然として砂漠の国であるUAEにとって食糧安全保障は重要な課題です。
こうした点が、今回の内閣で「食糧安全保障担当大臣」が新しく指名された背景にはあります。

ではこの状況に、UAEはどのように立ち向かおうとしているのでしょうか?
UAEでは2010年から「UAE Food Security Strategy」という戦略を策定し、食糧安全保障確保のための政策を進めています。
この戦略においては、たとえば以下のような対策が掲げられています。

海外の農地への投資
自国では環境上どうしても農地確保が難しいのであれば、潤沢な資金を活かして海外で農地を確保してしまおう、というアイデアです。
実際にスーダンで400,000ヘクタールの農地を獲得するといった活動を展開しており、今後もアフリカやアジアでの農地確保を進めることとしています。
これにより、輸入食品の価格変動があった際にも自国用の食糧を確保することができます。

国内食糧生産の促進
水耕栽培や植物工場といった技術の活用により、水資源を節約しながら自国内での農業を増やす試みもなされています。
Emirates Hydroponicsなど、国内で大規模な水耕栽培施設が設立されているほか、日本からも丸紅やシャープといった企業が植物工場の輸出事業を展開しています。
参考:
丸紅、昭和電工、千代田化工建設が共同で植物工場の海外展開を推進する件
中近東での「植物工場」の事業化に向けた実証実験を開始


地域食糧ハブ構想
食糧自給に関わる課題を抱えているのは、何もUAEだけではありません。
これは砂漠の広がる中東、アフリカ地域に共通した課題であるということができます。
こうした状況を鑑みて、UAEの良好な物流環境を活かした、地域の食糧供給ハブとなろうというのがこの「Regional agri-food hub」です。
中東北アフリカ地域への食糧は、まずUAEに集まるという構図を作ってしまえば、地域にとってもUAEにとっても食糧の安定した供給が可能になります。



このように、UAEでは砂漠の国という厳しい環境にもかかわらず、明確な戦略を打ち立てて食糧安全保障という課題に立ち向かおうとしています。
特に地域ハブの構想に関しては、これが実現すれば中東北アフリカ地域への食品輸出を考える上で、UAEの重要性はさらに高まるでしょう。

ksn Research & Consultingでは、自社で中東に食品輸出を行う経験を通じて、中東・UAEの食品市場に精通しています。
中東・北アフリカの食品ハブとなるUAEへの食品輸出、あるいは水耕栽培や植物工場などの栽培技術、海水淡水化等の水処理技術の中東向け輸出について、ご興味がございましたら是非一度ご連絡ください。



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